
修士論文を書き終えて、今あらためて思うことがあります。それは、論文のテーマは「自分が本当に関心を持てるもの」にした方がいい、ということです。
もちろん、これはあくまで私個人の経験です。大学院や専攻、指導教授との相性によって状況は違うと思います。それでも、私の場合は、最終的に自分の好きなテーマを選んで本当によかったと思っています。
最初はかなり悩んだ
私は台湾の大学院で修士論文を書きました。テーマを決める段階では、かなり悩みました。
当時の私は、台湾で台湾華語のオンラインスクールの運営にも関わっていたので、最初は「オンライン教育」や「語学教育」をテーマにすることも考えていました。オンライン教育なら、比較的まじめで研究テーマとしても説明しやすいですし、日本語教育や語学学習ともつなげやすい。大学院の論文テーマとしても無難に見えます。そう考えると、そちらの方が安全なのではないかと思っていました。
一方で、私の中にはずっとストリートダンスへの関心がありました。ヒップホップ、ストリートダンス、ダンス教育。自分の人生の中でかなり大きな意味を持っていたテーマです。でも正直に言うと、最初は「ダンスで修士論文を書いていい」とは全く思っていませんでした。
ダンスで論文を書けるとは思っていなかった
「こんなテーマで本当に認められるのか」「指導してくれる先生が見つかるのか」「もっと無難なテーマにした方がいいのではないか」。かなり不安でした。
実際、学校内にストリートダンスや体育科教育を専門にしている先生は、一人もいませんでした。だからこそ、最初から「これは無理だろう」と自分で決めつけていた部分もありました。
好きなことを選んだら、受け入れてくれる先生がいた
もちろん、最初からすべてがスムーズだったわけではありません。
指導教授になってくれた先生は、専門が認知言語学や中日対照研究で、ダンスや体育教育とは畑違いの分野でした。それでも先生は、「生徒が本当に興味を持てるテーマで書いてほしい」という気持ちを伝えてくれて、このテーマを引き受けてくれました。
ただし、条件はありました。ヒップホップやストリートダンスをテーマにする場合、教育的な要素を必ず絡めないと、学校から認めてもらえない。そこは注意するように、と最初に言われました。「ダンスそのもの」ではなく、学校教育や体育科教育、文化理解、指導実践と結びつけることで、初めて研究として成立する。この枠組みを教えてもらったことで、自分の関心と教育研究をつなげる方向が見えてきました。
あとから分かったことですが、私は先生にとって初めての指導生徒でした。専門外のテーマを、初めての指導生徒と一緒に進めるというのは、先生にとってもかなり冒険だったと思います。不安もあったはずです。
だからこそ、というのもありますが、私は執筆が進んでいる間、ほぼ毎週、先生の研究室を訪ねて執筆状況を報告し、相談するようにしていました。かなり厳しく指摘されることも多かったです。それでも、後半になるにつれて、先生も少しずつ安心してくれたのか、雰囲気がだいぶ柔らかくなっていきました。
このテーマを認めてくれたことへの恩返しの気持ちもありましたし、先生を安心させたいという気持ちもありました。専門の先生がいない中で指導を引き受けてもらったからこそ、自分から積極的に動く必要があると思っていました。
この経験から思ったのは、テーマを選ぶときに、最初から自分で可能性を狭めすぎなくてもいいということです。自分が本当に関心を持っているテーマなら、角度を変えたり、学術的な枠組みと結びつけたりすることで、研究として成立する可能性があります。
もちろん、指導教授との相性や専門分野との関係は大切です。でも、最初から先生に合わせすぎて、自分の関心を完全に消してしまうのは、少しもったいないと思いました。
長丁場だからこそ、テーマへの関心が支えになった
修士論文は、思っていた以上に長丁場でした。テーマ設定、先行研究、研究目的、インタビュー、文字起こし、分析、本文執筆、参考文献、書式、口頭試問、修正、製本。一つ終わったと思ったら、また次の作業が出てきます。
途中でかなりしんどくなる時期もありました。諦めるという選択肢は最初からなかったですが、それでもストレスは普通に大きかったです。もし自分が全く興味のないテーマを選んでいたら、このストレスに耐え続けるのはもっときつかったと思います。もちろん、好きなテーマだから楽になるわけではありません。好きなテーマでも普通に苦しいです。でも、好きなテーマだからこそ、しんどい時期にも最後まで向き合い続けることができました。「せっかくなら、ちゃんと形にしたい」と思えました。
無難なテーマが悪いわけではない
もちろん、無難なテーマが悪いわけではありません。研究しやすいテーマ、資料が集めやすいテーマ、指導を受けやすいテーマを選ぶことも大切です。大学院では、現実的に完成させることも重要です。
ただ、私の場合は、「無難さ」だけでテーマを選ばなくてよかったと思っています。自分の人生の中で意味があるもの、長い時間をかけても向き合えるもの、書き終わった後に「このテーマでよかった」と思えるもの。そういうテーマを選べたことは、修士論文を書く上でかなり大きかったです。
書き終えて思うこと
修士論文を書き終えた今、あらためて思うのは、やはり「好きなことで書いてよかった」ということです。
私は最終的に、学校教育におけるストリートダンス受容をテーマにしました。とくに、日本の体育科における「現代的なリズムのダンス」と、ストリートダンス文化の関係について考えました。このテーマは、私自身のダンス経験ともつながっていました。専門の先生が一人もいない中で、先生と一緒に手探りで進めてきたテーマだからこそ、苦しい時期もありましたが、最後まで向き合うことができたのだと思います。
これから修士論文を書く人、大学院に進学しようとしている人に伝えたいのは、テーマ選びでは「書きやすさ」だけでなく、「自分が本当に向き合えるか」も考えた方がいいということです。先生に相談することはもちろん大切です。でも、先生に合わせすぎて、自分の関心を消してしまう必要はないと思います。
修士論文は長いです。途中で悩みます。しんどくなる時期もあります。だからこそ、自分が本当に関心を持てるテーマを選ぶことには、大きな意味があると思います。私の場合は、無難なテーマではなく、好きなことを選んでよかったです。









